皮質について

大脳新皮質にもどります。

一見、大脳の皮質は、同じように見えますが、場所によって、まったく違う機能を持っています。このことを機能局在といいます。

1861年、Brocaという学者が、運動性失語症患者を調べ、 左半球の下前頭回後部(ブローカ野)に損傷があることに気づきました。

運動性失語症とは、他人の話を聞くことができ、他人が読んだ言葉も理解できますが、

話すことができず、話しても片言程度になります。

Wernickeという学者が、上側頭回後部が破壊されている患者に感覚性失語症があることを突き止めました。

この領域をウエルニッケ野と呼びます。

多弁で流腸(りゅうちょう)に話せますが、その内容が意味のないもののようです。相手の話している言葉が理解できません。

次に、

ドイツの神経科学者のコルビニアン・ブロードマン (Korbinian Brodmann)は、フランツ・ニッスル(Franz Nissl)によって開発された脳の異なる種類の細胞を染色する組織染色法に注目しました。各層の厚さや細胞の密度は異なるため、これらを細かく分類し、1909年にヒトの脳を52の異なる領域に分けました。現在ブロードマンの脳地図と呼ばれている区分を作りました。彼の作成した区分は視覚野における17野と18野の区分など、多くの脳領域について非常に正確なものでした。

さて、次に、

大脳皮質を弱い電流で刺激すると、どうなるでしょう。

下のアニメのように、手足の運動を誘発したり、筋収縮を起こします。

運動を誘発できる場所は、下の大脳の側面像のアニメで示しました。

中心溝のすぐ前方の中心前回に限られています。一次運動野といいます。

 

次に、下のアニメのように、中心溝のすぐ後方、中心後回を弱い電気で刺激すると、手や足に接触感や圧迫感が生じます。強い痛みではありません。

私たちは、皮膚をつねられると、痛かったり、抑えられたと感じます。このとき、皮膚からの刺激が神経を経由して脊髄を通り、大脳の皮質に伝わり、痛いとか押されたと感じます。

この実験は、神経を介して刺激が伝わる方向とは逆方向に、弱い電気的刺激を大脳皮質に加えることで、皮膚で感じる場所を探し、皮質で知覚の地図を作りました。

体性感覚とは

目・耳・鼻・舌などの感覚器以外で感じる感覚があります。

つまり、触覚痛覚などの皮膚で感じる感覚,筋肉が収縮していることを感じる深部感覚、腹痛、胸部、頭痛のような内臓の変化で生じる痛覚などもさします。

この一次体性感覚の場所は、中心溝のすぐ後方、中心後回にあります。

 

 

 

カナダの脳外科医ペンフィールド(1891〜1976)は、人間の身体のさまざまな部位の機能が、大脳のどこに対応しているかを表す脳地図を作製しました。この身体各部位の大きさと脳地図で対応している大きさは、比例した関係にはなっていません。つまり、手と足をみたとき、手や顔の運動は、足の運動よりも、細かく色々なことをするため、皮質に占める割合が、足よりもずいぶん広いです。感覚についてもおなじようです。


身体各部位の大きさを、逆に脳地図での大きさに置き換えた模型を「ホムンクルス」といいます。


このホムンクルスの図は、どの身体各部が、感覚器として重要かが一目で分かる表示方法になっています。同じようにして「動物のホムンクルス」もつくられています。
?図-3 動物のホムンクルス    
サル ネコ ウサギ
  図-3.池谷祐二著『進化しすぎた脳』から

ネコやウサギのヒゲに相当する部分は大きく、大切な感覚器であることが分かります。子供のころ、ネコのヒゲを切ってはいけないと言われたものです。

「人間のホムンクルス」は、胴体にくらべて、舌や唇(くちびる)・手の指(とくに人差し指)・目が大きいのが目立ちます。

ホムンクルスとは、ラテン語で小人の意味で、ヨーロッパ錬金術師が作り出す人造人間、及び作り出す技術のことです。人間の脳に人体の部位を当てはめ、小人に例えて脳機能を説明するために使われています。

以上のように、

ブロードマンの脳地図とペンフィールドの脳地図は、脳の機能を調べるために、ともに使われています。

 

感覚野の復習

 

一次体性感覚野 、二次体性感覚野と一次運動野以外に、一次視覚野、一次聴覚野があります。

一次視覚野は、後頭葉の内側面で、鳥距溝(ちょうきょこう)の上下(Brodmann17野)にあります。

下のアニメは、視野の異常から、視神経、視交叉、視索、視放線の障害を推測できることを表しています。

次に、

対光反射について、説明しておきます。網膜が明るい光を感じたとき、瞳孔、つまり、瞳が収縮します。このことを、反射と考えています。

瞳孔の直径は最大約8mmから1mmまで約0.2秒で変わり、網膜に届く光量を最大64倍に変化させます。

下のアニメでは、左眼にやや暗い状態を作っておき、そこに、懐中電灯の光を急にあてます。このとき、網膜で感知した刺激は赤い線で示すように、外側膝状体に行く経路と中脳の視蓋前域に行く経路に分かれます。

外側膝状体に行く経路は、その上のアニメにあるように、ものを見極める一次視覚野にいくものです。

視蓋前域に行く刺激は、左だけでなく右の視蓋前域にも行きます。ここから、左動眼神経の副核と右の動眼神経副核に刺激が伝わります。

青い線で示すように、この刺激は左右の毛様体神経節に連絡し、左右の瞳孔括約筋に伝わります。

懐中電灯の光の刺激が左眼の網膜に強烈に加わると、左眼と右眼の両方の瞳孔括約筋が収縮します。

つまり、右眼を眼隠し、左眼に光をあてると、右眼も縮瞳するのです。右眼に光がはいっていなくても。

 

すると、瞳孔の大きさが小さくなります。これを縮瞳といいます。

ここで、瞳孔括約筋の簡単な解剖を示します。

瞳孔括約筋は、ドーナツ型をしています。この筋肉が収縮すると、ドーナツ型が小さくなります。

弛緩すると、ドーナツ型が大きくなります。

下の真ん中の図では、通常の光での瞳孔の大きさですが、明るいところでは、網膜にたくさんの光がはいるため、まぶしいです。光の量を少なくするように、下の左図のように、瞳孔の大きさが小さくなります。

このとき、瞳孔散大筋は、あまり変化してないようです。

 

 

では、瞳孔散大筋はどのような仕事をしているのでしょうか。

光の量が少なくなると、つまり、まわりが暗くなると、人は周りがよく見えるように、瞳孔を開いて、たくさんの光の量を網膜に取り込もうとします。

このとき、瞳孔括約筋が弛緩し瞳孔を大きくするだけでなく、さらに、瞳孔を大きくするために、瞳孔散大筋が収縮し、瞳孔がおおきくなります。下の図の右側の状態を指します。

瞳孔が縮瞳する反射が、対光反射以外にもあります。

調節反射と輻輳(ふくそう)反射です。ここでも、縮瞳します。

調節反射

近くを見るとき、水晶体が膨らみます。水晶体の屈折力が増して、ものが見やすくなるわけです。http://www.skmc.jp/anime/child/eye/eye_2.htmを参照

このとき、下の図のように、毛様体輪状筋が緊張し、円周がせばまります。

チン小体が緩(ゆる)くなります。すると、

小体で引っ張られていた水晶体は、もともとの厚い状態に戻ります。

また、

遠くを見ると、毛様体輪状筋が緩くなり、円周が広くなります。

チン小体は逆に緊張し、水晶体を外向きに引っ張ることになります。

水晶体はうすくなり、遠くのものが見やすくなります。

 

ここで、縮瞳も起こります。

瞳を開く(散瞳)と、レンズを広く使うことになります。
レンズを広くつかうということは、光線が多くの方向からやってくるため、ピントが合うのは特定の距離だけになります。

一方、縮瞳すると、レンズの中央部分しか使わなくなります。
光線が真正面からの平行したものばかりを受け入れることになるため、ピントが合いやすくなります。 このことを焦点深度が深いといいます。

近視の人が裸眼で見ようとするときに、「やぶにらみ」と言って目を細めるしぐさをすることがあります。これは目の絞りをさらに絞ってピントを合いやすくしているのです。

ピンホール・カメラのように、極端に絞りきってしまえば「パンフォーカス」と言って、どの距離でもピントが合います。

輻輳反射

物体を近距離で注視すると、両眼の視軸が近寄ります。これを輻湊といいます。近づいてくる物をみつめると両眼の内側にある内直筋という筋肉が同時に収縮し、寄り目になります。

追記

ここで、一休みです。

大脳皮質の機能局在は、運動野、体性感覚野(一次と二次)、言語野(感覚性と運動性)、視覚野と聴覚野の5つです。

今回、聴覚野に触れていませんが、一休みです。