■ 耳管ってなんだろう ■
耳管

 耳管とは、耳と鼻をつなぐ管のことで、成人で約3.5センチあります。これは普通は閉じているのですが、ツバを飲み込んだり、アクビをしたりすると開いて、鼓膜の外側と内側の気圧のバランスをとっています。

 耳管の働きで、鼓膜はピンとする。
 鼓膜の内側で耳小骨がある空間の部屋は鼓室といいます。ここに空気がたまっているため、鼓膜が振動し音が伝わっていくのです。うまく振動するには、鼓膜はピンと張る必要があります。
 そのためには、外気の圧の変化に応じて、鼓室内の圧が同じように変化する必要があります。耳管で外と通じるようになっています。
飛行機に乗ったときのことを考えましょう。
 高度1万メートルになると、飛行機の中とはいえ気圧が低くなります。つまり、鼓膜の外は気圧が低いですが、鼓室内は地上にいたときと同じ圧のままです。アニメにあるように、鼓膜は外向きにふくらみます。耳がつーんとして、聞こえにくいですね。ここで、つばを飲むんだり、ガムをかむと耳管が開いて、口から鼓室に飛行機の中の空気が流れ込み鼓室の圧は鼓膜の外と同じ圧になります。前と同じように、聞こえます。
<アニメ制作者 県立日南病院臨床検査部主任技師 藪押 利香>
潜水艦で海底深くもぐった気持ちになってみよう
 海に10mもぐると、地上の約2倍の圧を体にうけます。20mもぐると約3倍の圧をうけます。鼓膜の外側から鼓室に向かって力が働き、鼓膜は内側にへこみます。つばをのみこむかあくびをすると耳管が開き、潜水艦内の空気が耳管を通って、鼓室に入ります。鼓膜はもとの位置にもどり、音が正常に聞こえます。
<アニメ制作者 県立日南病院臨床検査部主任技師 藪押 利香>
中耳炎と深い関係があります。考えてみましょう。
滲出性中耳炎の成因
  滲出性(しんしゅつせい)中耳炎とは、鼓室内の圧が慢性的に外界の大気圧よりも低い状態が長く続いた場合に起こります。その大きな原因は、鼓室内の空気を入れ替え、鼓膜が振動しやすくするという耳管本来のはたらきがうまくいかなくなるためです。これには耳管そのものに問題がある場合と、耳管外部からの圧迫により耳管が狭くなったり、あるいは耳管の開口部をふさいでしまう場合とがあります。

  鼓室内の換気が充分にできない状態が長く続きますと、鼓室内の空気は周囲の粘膜に吸収されてしだいに陰圧になってきます。その結果、鼓膜は外界の大気圧に押されて内側に凹みます。
 これだけでも聞こえは低下しまた耳閉感を自覚しますが、いずれ酸素欠乏に陥った鼓室の粘膜からドロッとした液体(滲出液)が分泌されるようになります。これが鼓室内にたまり鼓膜の動きがさらに悪くなるため、ますます聞こえが低下していきます。

滲出性中耳炎の具体的な原因
  耳管の通りが悪くなる原因にはいろいろありますが、多くはたまってくる液体を鼻腔方面に排出する作用のある繊毛(せんもう)の働きが低下することによります。また、小児期によくある原因一つとして、鼻腔のつきあたりにある咽頭扁桃(一般にはアデノイドと呼ばれる)が肥大し、そのために耳管の入り口をふさいでしまうことがあります(右図)。
  また、もともと慢性副鼻腔炎やアレルギ−性鼻炎などがある場合では、耳管周囲の粘膜が腫れるために耳管が細くなったり、あるいは成人では耳管周囲に発生した腫瘍(時に悪性)でも同様の症状が起こります。

急性中耳炎とはどう違うのか?
  急性中耳炎(正しくは急性化膿性(かのうせい)中耳炎)とは、風邪(急性上気道炎)に伴って鼻の奥やのどにいる細菌が耳管を通って鼓室に入り、ここで繁殖して鼓室粘膜に炎症を起こすものです。その結果多量の膿がたまり、これが鼓膜を内側から刺激するために強い痛みが生じます。
  滲出性中耳炎は、膿ではなく前述のように水(滲出液)が徐々にたまってくるもので、急性中耳炎のような痛みを初めとする強い症状がほとんどないのが特徴です。
 しかし、近年急性中耳炎の治療に抗生物質が広く使われるようになって以来、抗生物質によって膿の中の細菌は死滅するものの、膿そのものは無菌の液体へと変化して鼓室内に残ってしまうという状態がよく見られるようになりました。これは今まで述べてきた滲出性中耳炎の病態と全く同じもので、急性中耳炎の不完全な治療が滲出性中耳炎をつくってしまうという結果になっています。
 また逆に、滲出性中耳炎がもともと存在している場合に風邪などが原因で耳管から鼓室内に細菌が侵入しますと、鼓室内にたまっている滲出液の中で細菌が急速に増えて滲出液が膿へと変わり、結果として急性中耳炎に移行するという事態もよく見られます。
 つまり急性中耳炎と滲出性中耳炎は全く異なった病態ではあるものの、時としてお互いの状態に移行しあうという非常に近い関係にあるといえます。

滲出性中耳炎の予後は?
 
滲出液を減らし、あわせて耳管機能を正常化させる作用を持つ特効的な薬剤は未だほとんど開発されておらず、あくまで補助的な効果の域を出ていないのが現状であり、現在のところは滲出性中耳炎の治療は各種の治療法を組み合わせて行なう必要があります。
  いずれにしましても滲出性中耳炎の経過および治療は長期間かかることが多く、医師、患者、保護者の根気と協力が不可欠です。しかしながら、滲出性中耳炎患児の大半は10〜12歳くらいまでに症状が軽快して聴力が安定・正常化してくることが多く、そのままずっと病院から離れられないということはまずありませんので、焦らずまた途中で投げ出さずにじっくりと治療に取り組んでくださるよう保護者の方には特にご理解とご協力とをお願い申し上げます。
参照:http://www.minamiboso.com/ent9702/kaisetu/syosai1.html