B細胞
1.B細胞はなにからできるのでしょうか。
血液ってなんだのコーナーで、説明しました造血幹細胞から、B細胞とT細胞ができます。

造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)
白くアワのように見えるのがB細胞の前駆(ぜんく)細胞、つまり、まだ成熟(せいじゅく)してないB 細胞。
丸 くて黒い細胞(ブドウのフサのようにみえる)がより幼弱(ようじゃく)なB前駆細胞です。
この画像は試験管(しけんかん)の中で、胎児肝の細胞を他の細胞と一緒に培養(ばいよう)した際の写真です。からだのなかの状態(じょうたい)をそのまま表していません。

国立国際医療センター研究所
地域保健医療研究部
高木 智先生の許可の元、掲載

2.B細胞の仕事は、何でしょうか。
抗体を作ります。
抗体とは、何だったでしょうか 。
自分にとって、異物(いぶつ)なもの、つまり、自己でないものを抗原(こうげん)、自己に対抗する原としたとき、これに対抗するものを抗体といいます。
しかし、自分の細胞を抗原と考えて、抗体がつくられる事もあります。
ひろく考えると、免疫システムで相手にするものが抗原、これに対抗するものが抗体になります。
人は、抗体を無作為に作ることができます。つまり、
あらゆる抗原、未知のものに対して、一人の人間は、すでに、あらゆる抗体を作り持っています。
感染する前から、エイズウイルス、新型インフルエンザウイルスに対する抗体も持っています。では、みんな、ウイルスに負けないと考えますが、これらは、力の弱い抗体です。
力の弱い抗体が強い抗体になり、その数が増えることが、免疫力でしょう。免疫力がつく前に、病気になることが多いです。
体内に、抗原が入ってきて、はじめて抗体が作られるのではありません。すでに、あらゆる抗体を持っているのです。
1個の免疫細胞は、1種類の抗原に対して、1種類の抗体しか用意しません。
3.なぜ、このようなことができるのでしょうか。
人の免疫機構では、様々な遺伝子がくみかわって、新しい遺伝子から新しい蛋白質、つまり、抗体を作ることができます。
体内の免疫のシステムでは、新しい遺伝子が生まれています。ですから、自分と同じ人間は、この世にはいないことになりますね。
つい最近まで、母親と父親の両方から、遺伝子をもらい、その中から、両親に似つかないある遺伝子が発現したとき、子供は個性的になると考られていました。
ところが、免疫機構では、遺伝子があらたに作られ、それに従って新たな蛋白質が作られていることがわかりました。つまり、人間の体の中で、両親の遺伝子に関係なく遺伝子が作られているわけです。
実は一卵性双生児も、それぞれべつの人間なわけです。
この世に自分と同じ人はいません。
免疫に守られて、いのちをさずかった自分の体は、貴重です。
大事にしましょう。
いろいろな抗原をカギにたとえると、この部位でいろいろな抗体、かぎあながつくられます。
1億種類に及ぶ抗体が作られる場所
抗体の形は、左図に示しました。2個の抗原をくっつけます。
 
いろいろな抗原の中には、自分の体に似たもの、またはおなじものもあるでしょう。
 
自分の体の細胞に似た抗原に対しても抗体が作られます。
4.自分の体の成分に対して、抗体も作られます。それでは、人間は死んでしまいます。
どのように、なっているのでしょう 。
自分の体の成分に対して、抗体ができたら、わたしたちの体は、なくなってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。人間は、どのようにして、自分のからだの成分に対して抗体を作らずに、生きてきたのでしょうか。実際は、自分の体の成分に対して、抗体は作られますが、その抗体は、なくなっていきます。どのようにして、なくなるのでしょうか。
下のアニメのように、B細胞は骨髄で作られます。preB細胞から未熟B細胞になるとき、
自分のからだのいろいろな抗原に対して抗体ができます。
自分の体の成分は、免疫細胞のまわりにいつも大量にあります。
そのため、この時期にできた抗体は、ほとんどが自分の体に対してできたものです。未熟B細胞が反応し、できた抗体は、消えていきます。
骨髄でできた未熟B細胞は、血流に乗って、リンパ節または脾臓(ひぞう)に移動します。

下のアニメは、自分の体の成分を抗原と認識(にんしき)したとき、それに対して、抗体ができ、その抗体が消えていく様子を表しています。これらの反応は、未熟B細胞で行われ、成熟B細胞で終わります。
未熟B細胞が、リンパ節または脾臓(ひぞう)にあつまり、自分の体の成分に対してできた抗体を消してしまった後、成熟なB細胞になる様子です。
リンパ節にたくさんのB細胞が集まります。
赤で示した細胞はB細胞で、青はT細胞です。
胸腺(きょうせん)で、B細胞と同じように、T細胞も自己の体成分にたいしての抗体を消去(しょうきょ)した後、リンパ節と脾臓に集まります。

5.体に自分でない抗原が入った場合、例えば、インフルエンザウイルスが侵入したとき、どうなるでしょう
ウイルスまたは細菌
などの抗原とします。
(1)抗原は血液中に存在しますから、リンパ節に流れ込みます。
B細胞がたくさん集まった場所 この場所に抗原が入ります。
(2)たくさんのB細胞が、抗原にくっつきます。すると、くっつく刺激でB細胞が分裂し数が増え、以前からある弱い抗体(IgM)がIgGという強い抗体に変わります。
(3)体の中に、たくさん抗体ができた方が良いでしょう。形質(けいしつ)細胞がこの役目をします。
ウイルスのページで見たように、ウイルスの蛋白質ののこりかすに対して樹状細胞が反応して、ヘルパーT細胞が元気になりました。このヘルパーT細胞が、ここで登場です。
 
上のアニメのように、元気になったヘルパーT細胞が、B細胞を元気づけ、B細胞を形質細胞に変えます。
 
抗体をもったB細胞を増やすよりも、抗体をたくさん作る形質細胞を増やす方が免疫には有利です。
(4)抗体は、自分の体にとって、いらないまたは良くない細胞、細菌を処理(しょり)します。
抗体がたくさんくっついた抗原は、働けなくなります。
 
つまり、抗原は私たちの細胞にくくっつき、悪さをしますが、それができなくなるわけです。
 
 
以前(いぜん)、自然免疫で登場したマクロファージは、細菌とかウイルスを食べましたね。抗体がくっついた抗原、つまり、細菌とかウイルスは、さらに、マクロファージにとって食べやすくなります。
 
 
 
抗原をやっつける方法の3番目です。補体(ほたい)という物質が大事な仕事をしています。
C1と名付けられたものが、C5,6,7,8,9の物質を元気づけます。これらは連鎖(れんさ)反応といって、つづけておこります。
 
 
最後にできたC5b6789という物質は、細胞の膜に穴(あな)をあけます。あいた穴から、まわりの水とかが細胞の中に入り、細胞または細菌は死にます。
ここまで難(むずか)しい話しをしてきました。
難しい話しはさておき、知ってもらいたいことは、毎日、何気なく生きていることが、大切だということですね。自分たちが知らないところで、免疫にかかわる 細胞が日夜働いているのです。私たちヒトは、頭の中で考え、行動するため、自分の体はすべて脳でコントロールされているように、思いがちです。実際(じっ さい)は、生きていることは、あらゆる細胞が動いているということでしょう。ヒトとして、この世にうまれてきた以上、細胞が止まるまで、生き抜きましょ う。 一人一人の細胞はせいっぱい生きています。他人の生きる力をうばうことは、やめましょう。
(5)記憶B細胞の出現
さて、再びウイルスが侵入したとき、私たちは、すぐに、抗体をつくることができます。これが、免疫を獲得したことですね。
何故(なぜ)でしょう。抗体をつくることができる記憶(きおく)をもった細胞がいるからです。
リンパ節のB細胞がたくさん集まった場所(胚中心はいちゅうしん)で、記憶細胞はできます。
 
 
 
6.抗体がウイルスをやっつける事は、いつまで続くのでしょうか。
ウイルスをやっつけたとき、じつは、多くなりすぎた抗体は、自分の体にとって、異物になってきます。
同抗原抗体反応をしていると、つぎのウイルスに立ち向かえません。
ある程度のところで、今の抗体は消えていく必要があります。
抗体の一部に対して、抗体が出現します。
アニメで示した赤色の抗体です。くっつく部位はもとの抗原の形に似ています。
 
赤の抗体が離れないもとの抗体は、抗原と反応できません。
抗体の仕事は終わりです。
 
抗原と反応したB細胞の中に、抗体のある部分に対して抗体ができるようになります。茶色で示しました。
 
これと反応したB細胞は、死んでしまいます。
免疫反応が終わります。