主に、頭部・顔面を支配する12対の脳神経は、脳幹から出入りします。
復習ですが、脳幹は脊髄より上の部分で、上には大脳があり、背中側には小脳があります。脳幹は、延髄、橋と中脳を合わせた領域です。
発生学的に、各々、異なったものです。延髄は髄脳胞から、橋は後脳胞の腹側部から、中脳は中脳胞から発生します。
ここでは、これらの脳神経について学びます。
https://nurseful.jp/nursefulshikkanbetsu/cranialnerve/section_1_00_01/から引用。
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000309.htmlから引用。
左の図は、脳を下から見たものです。脳をおなかの方向からみたもので、脳の腹側になるわけです。
下のアニメは、脳の構造1で示したもので、おなかの方向から脳をみたものです。
下の図は、上で示した脳神経が、頭蓋骨から出て行くところを表しています。
下の右の図は、英語表記がありますが、大脳の側面を表し、中脳、橋と延髄を横からみたものです。脳神経の神経核の場所を示しています。
動画で、脳神経の出所を見てください。
嗅神経について
嗅覚は最も原始的な感覚ニューロンです。
外からの刺激が、光の場合、眼で感じます。音は耳で聞きます。圧力や温度は、皮膚で感じます。これらとは異なり、ヒトが進化する過程で、最初に、外的から身を守りえさを探すために嗅覚があり、食べる前に毒かを見分けるために味覚が発達しました。
どのようにして、においを感じるのでしょうか。においのもとは、空気中または水中に漂っている分子です。これを受け取る場所が鼻腔の最上部にあり、これを化学受容器といいます。受容器に、においの分子がくっつくと、受容器電位という電気が発生します。安静時には、鼻腔を通る空気の5%しか最上部に届きません。意識的ににおいをかぐと、吸気の20%が最上部に届きます。
また、嗅覚と味覚は、食事のさいそれぞれの受容器を相互に影響しあっています。風邪で鼻がつまると味がわからなくなったり、変な味になります。
受容器電位の振幅、頻度、持続時間が中枢に伝わり、刺激の種類、大きさや危険度が中枢で判断されます。
下の図で、
https://www.deodor.co.jp/nioimec.htmlを参照
嗅細胞は、感覚細胞で約30日で新しい細胞に置き換わっています。嗅細胞の先端に嗅線毛が多数あります。
嗅細胞の嗅線毛にある嗅覚受容体に、におい物質がくっつくと、Gsというものが刺激され、これがアデニル酸シクラーゼを活性化します。
ATPからcAMPができます。cAMPはチャンネルを刺激し、チャンネルが開き、細胞の外から、Caイオンが細胞内に移動します。同時に、Naイオンも移動します。
細胞内に増えたCaイオンは、違うチャンネルを刺激し、細胞内のCLイオンがチャンネルから、細胞外に出て行きます。
このようなイオンの動きから細胞内に電位が生じ、刺激が活動電位として、嗅神経を介して嗅球に刺激が伝わります。
1個の嗅細胞は数種類から十数種類の受容体タンパク質を持っています。このため、約1000種類の異なるにおい物質に反応する嗅細胞があります。
嗅神経の中枢との連絡
下の図にあるように、嗅神経は嗅索を通ってから、同側および対側の嗅覚野(古質)に連絡します。一部は視床下部に達し、性行動を誘発します。
さらに、海馬、扁桃体、大脳辺縁系に刺激が伝わります。視床を経由した眼窩前頭皮質にも連絡します。
においの判別
各々の嗅細胞は、限られたにおい物質に特に強く応答します。
何千種類ものにおいには、各々の嗅細胞を興奮させる特有なパターンがあり、脳は、眼窩前頭皮質でパターンの違いで、においを記憶し、識別しています。
ニンニク臭は、少しの濃度で気づくようです。わさびの刺激臭は、聴覚障害者に火災などの異常を知らせる方法として用いられています。嗅細胞は同じにおいに対して順応が速くので、他人の臭いには敏感ですが、自分の臭いには鈍感です。
ヒトは、犬に比べて、100万〜1000万倍、感度が鈍いようです。
視神経について |
まずは、眼の発生について、下のアニメで理解してください。
眼は、前脳胞という神経管からできます。眼は、脳の一部で,飛び出したようです。角膜と水晶体は同じ外胚葉から発生しています。
網膜と色素上皮細胞は、同じ神経層からできています。
復習です。外の光または画像は、角膜、水晶体、硝子体を通り、網膜の内側に入ります。
さて、網膜では、どのような細胞が情報を処理しているでしょうか。
下のアニメを見てください。上が網膜の内側で、最初に、光を受けるところです。
こちらが網膜の奥(外側)
光は、まず、網膜の奥(外側)まで、届きます。そこには、2種類の細胞があります。アニメにあるように、錐体細胞と桿体細胞です。
細胞の先端が円錐状の錐体細胞は、強い光に反応し、分解能の精確さをあげ、色覚に関係しています。約600万個存在し、網膜の中心部にあります。
細胞の先端が円柱状の桿体細胞は、感受性が高く、弱い光に反応します。1億個以上あり、網膜の周辺部にあります。
夜行性のねこは、桿体細胞が多く、鳥類の多くは錐体細胞が発達しています。
双極細胞は、錐体・桿体細胞である視細胞からの信号を受け、神経節細胞に伝えます。
網膜の中心部では、錐体細胞:双極細胞:神経節細胞が1:1:1に対応し、分解能が高いことを示します。
網膜の周辺部では、100個以上の桿体細胞が1個の神経節細胞に対応します。
神経節細胞は、多極性ニューロンです。大きな多極性ニューロンが約100万個あります。その細胞体は、黄斑部は数層、その他の部位では、1層です。
多極性ニューロンは下の図で、
突起の数が 一本・・・ 単極性ニューロン
突起の数が 二本・・・ 双極性ニューロン
突起の数が 三本以上・・・ 多極性ニューロン
突起が細胞体から一本だけのび、それがさらに枝分かれ・・・ 偽単極性ニューロン
ここで、細胞には、粗面小胞体がありますが、軸索と樹状突起には、ありません。この粗面小胞体は、タンパク質を作る工場です。
軸索、樹状突起と細胞体の違いです。
http://www.geocities.jp/ululu_o_ululu/report-07-01.htmから引用。
次に、
水平細胞は、隣り合う視細胞を連絡するように突起を伸ばし、視細胞群からの情報を統合しているようです。また、これらのニューロンの間を埋めている細胞を、ミュラー細胞と言います。この細胞で、網膜は一種の閉じた環境になり、網膜ニューロン群を有害物質から守っています。
網膜色素上皮細胞は、視細胞の機能を維持しています。
1)脈絡膜の組織液が網膜に入らないようにしています。強膜、脈絡膜に炎症が生じても、網膜を守っています。
2)視細胞と反応しなかった光を吸収して散乱を防いでいます。
3)視物質という光を吸収するものの原料を、視細胞に供給し、古くなった物質を処理します。
網膜剥離とは、網膜神経層が色素上皮層からはがれた状態で、色素上皮細胞から、色々な物質が受けれないため、視野が欠損します。
http://www.takatsu-chiro.com/yougoshu/cranial-n-2.htm から引用
「子供のための医学」のページhttp://www.skmc.jp/anime/child/eye/eye_index.htm
にある「眼とは?」の「眼の仕組み」で説明したように、見ている物は、網膜上逆さまになります。
眼球を出た視神経の大半は視交叉を経て、視索になり、視床の外側膝状体に終わります。
視神経をまとめている外側膝状体は、視神経の中継核と言われます。
外側膝状体には、大細胞層と小細胞層の2つがあり、大細胞層では、動く光の点に敏感です。小細胞層は、持続的な光に反応します。つまり、動きに関する情報と細かな形や色に関する情報が分かれて中継され、視放線になり、一次視覚野へ連絡されます。
左のアニメで、視放線からの情報が一次視覚野に行きます。
この一次視覚野はどこにあるのでしょうか。
下の絵を見てください。
鳥距溝にあります。
視覚情報はどのように処理されますか? |
大脳皮質の中で、視覚情報を処理する領域は、全体の約1/3と広いようです。
視覚87% 聴覚7% 触覚3% 嗅覚2% 味覚1%といわれることもあります。実際は、視覚だけで全てを判断しませんから、場合によって、視覚以外の情報も、相当、大脳に影響していると思います。しかし、視覚の情報量は多いことは間違いないようです。
では、どのように、視覚情報は処理されるのでしょうか。
一次視覚野には、特定の方向を向いた細長いスリット状の光に反応する細胞ー単純型細胞。
スリット状の光が特定の方向に動くときに反応するー複雑型細胞。
特定の長さと方向を持つスリット状の光に反応するー重複雑型細胞があるようです。この3つの細胞で、視覚情報を線分の傾きや長さ、移動方向といった要素に分解し、物体の輪郭を作り出すようです。
同じ方向に限った単純型と複雑型細胞が集まり、垂直方向に反応すると説明されていますが、なかなか難しいです。
解っていることは、
1次視覚野は鳥距溝の上下にあります。 1次視覚野の視覚情報は、1次視覚野の前方に位置する視覚前野で分析されます。 その後、側頭葉および頭頂葉の視覚連合野に、視覚情報は送られます。 側頭連合野では、形や色の情報を統合して物体が何であるかの物体認知をおこなうようです。 頭頂連合野では、動きや奥行きの情報に基づいて、空間認知を行います。 右側の側頭葉と頭頂葉は、左目から入る視覚情報に関わり、左側の側頭葉と頭頂葉は、右目からの視覚情報に関わるため、形、色、動きなどの障害は、各々の反対側で、生じます。(8番の運動の仕組みで、障害について説明しています。) |
ここまでの話は、網膜に映し出された光が電気信号に変換され、網膜から視神経を介して、電気的なスパイクである活動電位が、後頭葉、側頭葉、頭頂葉に伝わり、再び映像として認識される道筋でした。アナログである景色が、網膜でデジタルになり、大脳で、再びアナログとして認識されるわけです。
話はもどります。
視細胞の外節で、光は電気信号に変わります。
これ以降、視細胞のコーナーに移ります。