脳の血管について
このページでのポイント 大脳へ、多くの血液を送る血管(けっかん)は、内頸動脈(ないけいどうみゃく)です。脳幹(のうかん)と小脳(しょうのう)へは、椎骨(ついこつ)と脳底(のうてい)動脈です。 脳のエネルギー消費量は、臓器重量の割合で、一番高いです。 脳出血には、くも膜下出血と脳内出血があります。 |
下のアニメは、心臓(しんぞう)の左心室(さしんしつ)から動脈血が脳に流れる様子を示しています。
左心室から、上行大動脈が出て、右側では、腕頭(わんとう)動脈になり、 そこから、右総頚(そうけい)動脈と右椎骨(ついこつ)動脈に分かれていきます。
右総頚動脈は、くびで、外頸と内頚動脈にわかれます。
内頸動脈をかいして、動脈血が脳内にながれます。
左側も、左総頚動脈を介し、首で、外頸と内頚動脈にわかれます。
左右の外頸動脈は、主に、顔面、脳の硬膜(こうまく)などに、流れます。
左右の椎骨動脈は、首の脊椎(せきつい)の側面を通り、大後頭孔から脳内にはいります。
鼻側(はながわ)
心臓から脳にいく血管で、右左に違い(ちがい)があります。右側は、腕頭動脈があり、そこから、右総頚動脈がでます。左側は、左総頚動脈が、直接でています。
やや後側から、脳に入る血管の椎骨動脈は、右左ともそれぞれの鎖骨下動脈からでます。
左側のアニメでは、左右の内頚動脈から中大脳、前大脳、後交通に、枝分かれ(えだわかれ)し、動脈血が流れる様子を表しています。
左右の椎骨動脈は、一本の脳底(のうてい)動脈に流れ,、さらに、後大脳動脈になります。
脳底動脈からは、脳幹(のうかん)、小脳などに関係する動脈がわかれます。
http://www.yamamura-clinic.net/index.php?id=73から転写
おもな血管の流れている領域(りょういき)は、どこでしょう。
その前に、大脳の断面の見方を整理しておきます。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A0%E7%8A%B6%E9%9D%A2から引用
矢状面(しじょうめん)とは、縦切りです。
冠状面(かんじょうめん)は、顔を正面からみた方向です。前頭面(ぜんとうめん、frontal plane)あるいは前額面(ぜんがくめん)ともいいます。生物の体を腹側と背側に(ヒトの場合は前側と後側)分割する場合に用います。
下の図は、横断面の絵です。https://rehatora.net/%からの引用です。
下の絵は、矢状面です。同様に、https://rehatora.net/%からの引用です。
脳血管の支配領域が、それぞれにさまざまな脳の仕事をしているため、血の塊(かたまり)で血管がつまったとき、さまざまな障害(しょうがい)がでます。
次に、脳出血について、考えてみましょう。2種類あります。一つは、くも膜下出血、もうひとつは、脳内出血です。
まずは、くも膜下出血を考えてみましょう。
下のアニメで、青色は硬膜を、黄色はくも膜、白い部分はくも膜下腔を表しています。
くも膜下腔には、脊髄液があり、その中に動脈が浮いている状態です。
この動脈にこぶができることがあります。理由ははっきりしていませんが、動脈瘤(りゅう)です。
このこぶが破(やぶ)れたとき、くも膜下に血液が流れます。これを、くも膜下出血といいます。
脊髄液が血液で染まります。アニメで確(たし)かめてください。
CTでは、血液のように、みずっぽいものは、白くなります。脊髄液はくも膜下にあり、脳の周りにありますから、右上のように、CT上で、白くなります。
一方、脳内出血があります。下のアニメで示すように、太い血管から、脳の組織内に細い血管が入り込んでいます。
この血管が切れたとき、出血します。
くも膜下の脊髄液には、血液が混じりにくいことが多いです。アニメで見てください。
出血はかぎられていますから、上のCT像(ぞう)のようにかたまりとして、白く見えます。くも膜下出血の場合、出血量がすくないと白さがうすいため、見逃すこともあります。http://www9.plala.or.jp/sophie_f/disease/cerebral4.htmlから引用
くも膜下出血の原因の血管は、脊髄液に浮いている血管です。脳内出血の原因の血管は、これらの血管から、脳組織に入り込んだ細い血管です。 出血した場合の見え方が異なる理由(りゆう)です。 |
次に、
脳内の動脈に流れる血液の量は??? |
脳には、血圧の変化に関係なく、血流量を一定にする仕組みがあります。
左のアニメのように、平均血圧 (=最低血圧+(最高血 圧ー最低血圧)/3 )が60mmHgから150mmHgの範囲で は、脳血流量は50〜55ml/min/100g脳乾燥重量
平均血圧60mmHgは、おそらく、最高血圧75〜70mmHg、最低血圧55〜50mmHgに相当するでしょう。
平均血圧150mmHgは、おそらく、最高血圧210〜200mmHg、最低血圧130〜120mmHgに相当するでしょう。
血血圧が低くなっても、また、相当に高くなっても、脳の血流量が変わらないため、フラフラせず、頭も痛くならず、物事を考えることができます。 |
しかし、驚くことに、脳血管は、動脈血中に溶けている酸素とか炭酸ガスの量に影響されます。
上で述べたような脳の血液量が、極端に変化します。
動物である人間は、食事をし、体の中で、色々な酵素という物質で、食べ物を栄養分に変えています。
このとき、酸素が使われて、残りに炭酸ガスと水ができます。血液中には、炭酸ガスが溶けています。この炭酸をPaCO2と表します。
PaCO2の正常値は、43〜47mmHgの範囲(はんい)です。病気でなければ、この狭い範囲で調節(ちょうせつ)されています。すごいです。
では、下に炭酸ガスに反応する脳血管の状態の図を示します。赤線は、上で述べたように血圧に対する脳血管の反応です。
青線が炭酸ガスに対する反応です。横軸は、炭酸ガスの変化を表しています。単位はmmHgです。
血圧の変動に関係なく、血液中の炭酸ガスは、正常値より、高くなると、脳血管は開き、血管内にたくさんの血液が流れ、血流量が増えることになります。
正常値より、低くなると、脳血管は収縮し、血液量が減ります。炭酸ガスは血圧の変動よりも、脳血管に与える影響は強力です。
次に、血液中の酸素が脳血管に与える影響について考えましょう。
人間の動脈血には、肺で得た酸素が多く含まれ、それぞれの組織で、酸素が使われた後、組織から帰ってくる血液の静脈血には、酸素が少なくなっています。動脈血に溶けている酸素は、PaO2と表します。aは動脈を英語で表したarteryのaです。
静脈血の場合、PvO2と表します。Pは圧、vは静脈を英語で言うveinのvです。O2は酸素です。
動脈血のPaO2の正常値は、95〜98mmHgです。
PaO2が50mmHg以下になると、一気に脳血管は拡張し、脳血管の血流量は増えます。
炭酸ガスと異なり、正常値以上に酸素が増加しても、血液量は変わりません。不思議ですね。
人間にとって、動脈血の酸素が少なくなると、生きていけません。特に、脳は、酸素に弱いです。
PaO2が50mmHg以下になると、脳は大変です。そこで、酸素が少ない血液でも、たくさんの血液が脳に運ばれるようにします。そのため、脳の血管は開きます。血圧の変化をしのぐ勢いで、酸素の変化に応じて、血管が開きます。
次に、
体全体の血流量から考えると、体重65kgの成人の場合、
1分間に循環(じゅんかん)する血液の量(ml)は
臓器別でみると、
臓器 安静時 運動時 比較
肺(はい) | 5000 | 25000 | 約5倍 |
脳 | 650〜750 | 750〜1000 | 約1.1〜2倍 |
胃腸・肝臓 | 1000〜1300 | 750〜1300 | 約3/4〜同等 |
腎臓 | 1000 | 500〜1000 | 約1/2〜同等 |
筋肉 | 750〜1000 | 筋肉と皮膚を合わせて約15〜22倍 | |
皮膚 | 150〜300 | 20000〜21000 | |
骨・脂肪 | 500〜750 | 250〜500 | 約1/2〜2/3倍 |
肺の血流量は、心臓から直接出た血液量です。
そのあと、いろいろな臓器(ぞうき)に
分かれ、血液が流れていきます。
肺の血液量は、各臓器に分布した血液量
の総和(そうわ)と同じです。
運動時、皮膚・筋肉の血流量は約20倍に増加し、意外に脳もやや増加します。
脳の血流量は、心臓から出る血液量の15%
脳のエネルギー消費量
臓器の重量当たりで、一番多い。
脳は、体重の2%しかないが、エネルギー消費量は18%
臓器 | エネルギー消費量(%) | 臓器重量(%) | 重量当たりのエネルギー消費量(Kcal) |
脳 | 18 | 2 | 900 |
心臓 | 11 | 6 | |
腎臓 | 7 | 633 | |
肝臓 | 20 | 52 | 48 |
筋肉 | 20 | ||
皮膚 | 5 | ||
その他 | 9 | 40 | 48 |
心臓と腎臓をあわせた臓器重量は、6%、
重量当たりのエネルギー消費量は、633Kcal
肝臓、筋肉と皮膚で52%。48Kcal。
じっとしているときも、脳だけはエネルギーをたくさん使っています。
それでは、脳のエネルギーのもとは、何だろうか????
おもにブドウ糖つまり、グルコースです。 病気がひどいときなど、グルコースが利用できないときには、脂肪成分のケトン体という物質も使われます。
体全体のブドウ糖消費量のうち、脳は46%をいつも消費しています。寝ているときも、常に、1時間当たり、5gのブドウ糖を使っています。(人は、1日何もしなくても、全体で、およそ260g消費します。このうち、脳だけで120g使います。)
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これを、脳血液関門(Blood Brain Barrier) と言います。
ふつうの血管のばあい、血管の内側から、Pore(あな)を介(かい)して、いろいろな物質が血管外にもれでて、細胞内にはいります。
脳以外の毛細血管と違(ちが)い 、脳の毛細血管は、Poreがなく、自由に物質(ぶっしつ)が出入りできません。血液中の物質を脳へ簡単に通さないようにすることで、脳を毒性物質から守る役割をもちます。その一方で、薬剤も通りにくくしています。
神経活動のエネルギー源(げん)になるLipid soluble(脂肪分解物のケトン体),glucose(糖)aa(amino acid=アミノ酸)は通過できます。また、お酒に含まれるアルコールや麻薬の類はどれも脂溶性なので、脂肪分が多い脳に染み込むことができます。左の図は、http://www.js-brain.com/glial.htmlから引用
脳の静脈系について
左の絵では、主な静脈系を表しています。
脳の表面を走る皮質(ひしつ)静脈系
実質内を走る髄質(ずいしつ)静脈系
脳室上衣下を走る上衣下静脈系
硬膜内にあり最終的な静脈還流を
行なう硬膜静脈洞
の4つに区分されます。
http://www.geocities.jp/study_nasubi/j/j12.htmlから引用
左のアニメを、ゆっくり見てください。血管の色が変わります。http://chousei58.com/?p=40052から引用し、改編
顔面、頭蓋骨(ずがいこつ)の外側に、
分布(ぶんぷ)する血管は、外頸静脈に
流れます。暗い青い部分です。
頭蓋骨内の脳からの静脈血は、
いろいろな静脈洞に集まり、
内頸静脈に流れます。
明るい青い部分です。
他の臓器でも見られますが、脳の動脈は、静脈のそばを流れていません。
また、静脈洞の存在(そんざい)は、他の臓器に、あまりなく脳に特有といえそうです。
静脈洞とは??
そのまえに、静脈と動脈の構造(こうぞう)は、以下の図です。
動脈は、弾性膜(だんせいまく)が厚く、伸縮力(しんしゅくりょく)があります。静脈は、動脈に比べて、伸縮力がありません。心臓より、下の静脈には、静脈弁があります。これは、心臓に血液を返すためです。心臓より上の静脈には、弁がありません。つまり、脳静脈には、弁がありません。左の図はhttps://www.kango-roo.com/sn/k/view/1840から引用
では静脈洞とはどういう構造でしょうか。
左の絵のように、青い部分が、静脈洞を表します。上矢状静脈洞は1例です。
硬膜の外葉と内葉は通常密着(みっちゃく)していますが、、正中部など一部の場所において、外葉と内葉との間に隙間(すきま)があり、そこに静脈血が 集まる場所があり、硬膜静脈洞といいます。https://health.goo.ne.jp/medical/body/jin009から転載
静脈洞に集まった静脈血は、左右の内頸静脈に流れ、
顔面などからの静脈血は、左右の外頸静脈に流れ、これらは左右の腕頭静脈になり、上大静脈に流れ、右心房にいきます。
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