敗血症での橈骨動脈圧は信用できるか

症例は、急性膵炎の患者で、スライドにあるように、PTGBDチューブが挿入され、Afとslow VTが併発し、人工呼吸管理された 89歳の患者でした。

ノルアドとプレドーパが投与され、スライド4にあるように、同側のマンシエット圧が橈骨動脈圧より20〜30mmHg高く表示されました。尿量が少ないため、大量輸液を行い、利尿薬を併用し、尿量が確保でき、その後、プレドーパを減量し、ノルアドを主体に投与しました。そのときのスライド11では、同側の橈骨動脈圧がマンシエット圧より20〜30mmHg高く表示されました。つまり、よく見る光景になったわけです。

さて、このとき、最初の橈骨動脈圧が低かったのは、カテーテルの具合がわるく、波形がなまったためと考えるでしょう。果たして、そうでしょうか。全く同じ状態で、血圧は変化しました。つまり、患者の状態がよくなるにつれて、橈骨動脈圧がマンシエット圧より高くなりました。

1980年から、開心術後に、橈骨動脈圧が、大動脈圧より低くなり、橈骨動脈圧は開心術では、信用できないという論文が発表され、毎年、同じような論文が2つ程度、Anesthesiologyという雑誌に掲載されました。同じようなことが、sepsisの病態でも生じているのでしょう。つまり、開心術、心停止などでは、末梢血管抵抗が低下し、術後または心停止復帰後、徐々に、血管抵抗が上昇するのでしょう。末梢の抵抗が低いため、橈骨動脈圧が低くなります。抵抗が上昇すれば、動脈圧も高くなるわけです。

ですから、sepsisの時は、橈骨動脈圧にとらわれずに、全身状態または大腿動脈圧の圧モニターの数値で評価した方がよいということになります。

スライドを供覧しておきます。患者はICUから退室しました。

 

 

血圧モニターとしてのマンシエット圧を考えてみよう。